何が言いたいのか分からなかった

 言葉を出そうとしたのだが、何が言いたいのか分からなかった。
「一樹に向かって転がってきたその生首は、一樹の顔を見るようにして止まった。いや娘の目玉は一樹の目を見ていた。清、お前どう思う、人間はいつ死ぬのだ」
「……」
「答えてみろよ、清。自分の考えをさ」
「……たぶん脳死じゃないのか」

「そうだろ、脳死だろ。だがな考えてみろよ、清。たとえ身体が無くなってもいきなりその脳が死ぬとは言えない。そうではないか。えっ、何か言ってみろよ……ふん。まぁ良い……俺がお前と同じ事を思った時だ。その身体から切り離された生首が目を動かした。分かるかお前に。その時の怖さ。えっ。先ほどから何も言わなくなったじゃないか。清。お前」
「いや今はどんな事が起こったのか真剣に聞いているだけだ」

 船長からの問い掛けで、やっとの思いで声を出したが、自分の声がかすれている事はすぐに気がついた。それに、この場で言うような言葉で無い事も、気がついてはいた。

「そうか、それなら良いが。俺はその時感じたんだ。娘には自分の置かれた状態が理解できていないのだろう。娘の目玉はゆっくりと動き、自分の身体を見た。当然そこには首から上が無い身体が天井から吊るされている。それは自分の身体である事などすぐに分かる事だよな。

 誰でも自分の体の特徴ぐらい覚えているからな。その時の娘の驚愕とした顔。今でも覚えているよ。度々一樹の夢に現れては俺を怯えさせる。娘は俺が殺したと思っているのだろう。そして今度は、その生首の唇が動いたんだ」
「娘さんの声が聞こえたのか?」

「いや、声が聞こえた訳では無い、唇が動いたんだ。だが俺には聞こえた。間違いなくその生首は俺に向かって話していたんだ。娘が言った最初の言葉は、甘えているように聞こえたんだ。 『いやよ、返してよ』

俺が娘に返した言葉は

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