俺が娘に返した言葉は

 娘が言ったその言葉の意味が分かるか、お前に。そして俺が娘に返した言葉は『いや、もう無理だ』それ以外何も言えないだろ。えっ、そんな状況でよ、それ以外に何が言えたんだ。その俺に対して娘はまたも話しかけてきたんだ。 『いやよ、元の様にしてちょうだい』

 まるで何かをおねだりするように聞こえたんだ、俺にはな。俺は彼女にこう答えたよ。『だからそれは無理だ、……無理な話なんだ』だがよ彼女も必死なんだろうな。力の有る限り俺に向かって話し掛けてくるんだ。 『いやよ、私このままだったら死んじゃうよ』

 俺はよ、その時言わなくて良い事まで言ってしまったんだ。『もう遅いんだ。君は皆に食われる運命だ』とな。何でそんな事を言ったのかな、その時の気持ちは俺には良く分かっていない。 『いやよ。ねぇ、お願い。私をからだにくっつけて』

 最後に彼女が言った言葉だよ。娘は叫ぶような声を出したんだ。いやそんな声が聞こえる筈がないよな。だってさ。人間首から上の頭だけでは声は出ないもんな。そして俺が彼女に言った最後の言葉は『ごめん。許してくれ。もう無理なんだ』何で俺が娘に対して謝る必要が在るのか、良く分からないけどな」

「一樹。いや船長。俺は何も言えない」
「清よ。娘はその後口が動く事は無かったよ。ただ彼女の目は、何時までも俺を睨んでいた。娘が驚いた時の顔付きと、必死になって声を出そうとする時の目付き、それだけは忘れる事は出来ない。どうだ清。分かったか、これが真実だ」

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